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2019年度

科目名	東アジアビジネス特殊研究	科目コード	8101	単位数	2
担当者名	石原　享一	開講時期	１後	開講年次	1年次

授業の到達目標及びテーマ: 　東アジアが世界の経済成長センターとなってから久しい。この地域におけるグローバルビジネスの展開は著しく、域内および域外との経済的な相互依存関係はますます強まっている。他方で、1997年のアジア金融危機や2008年のサブプライム・ローン危機などに象徴されるように、経済のグローバル化は東アジアビジネスの安定的発展にとって脅威となることもある。
　本講義では、東アジア（さしあたりは日・中・韓とASEAN を想定）という歴史的・文化的に多様で、政治体制が異なり、しかも経済発展レベルの格差も大きい地域を対象として、グローバルビジネス展開の歴史的変遷を跡づけ、その現状と問題点を探る。ビジネスは一方では食うか食われるかの生き残りをかけた競争の世界であるが、他方では雇用の創出や企業文化の伝播を通じて当地の社会経済発展に資することもできる。グローバルビジネスの現場で日々の経済文化交流を担っていくには、国際ビジネスの知識と規範を身につけていなくてはならない。それと同時に、その土地の社会文化や歴史に通暁し、経営を現地適応させていこうとする姿勢も求められる。そのようなグローバルビジネスに携わる人や企業が東アジアの平和と安定のために何ができるか、知恵を絞り、その方途を探ってみよう。
授業の概要: 　東アジア地域におけるグローバルビジネスの展開について、①国際政治経済の制度と構造についての理解、および②地域の社会文化や歴史の独自性に根ざした視点、という２つの側面から複合的に検討していく。具体的には、Ⅰ(マクロ編)、Ⅱ(理論編)、Ⅲ(企業編)、Ⅳ(ビジョン編)、の４つのパートに分けて理解を深める。
授業計画: 第Ⅰ部（マクロ編）：東アジアにおけるグローバルビジネスの展開を歴史的に段階区分して跡づける。
　１週目：戦後の日米中関係と超大国のヘゲモニー
　２週目：日本とアジアNIEs の発展
　３週目：中国経済の国際化とASEAN の成長
　４週目：東アジアの地域経済統合の可能性
第Ⅱ部（理論編）：東アジアをめぐる国際政治経済の制度と構造を理論的裏付けをもって理解する。
　５週目：東アジアにおける途上国と先進国との構造格差と開発経済学の諸理論
　６週目：環境保全に向けての国際レジーム下の東アジアにおける開発と環境
　７週目：東アジアにおける資本主義と社会主義という２つの体制の転変
　８週目：グローバル資本主義の脅威と国際金融のトリレンマ理論
第Ⅲ部（企業編）：ビジネスのグローバル展開において東アジアの企業はどのように行動しているか。
　９週目：中国における「国退民進」（民営化の推進）から「民退国進」（国有企業重視）への転換
　10週目：華僑・華人企業のビジネスと中国事業への進出
　11週目：香港が開いた華南経済圏と台湾EMS 企業の中国展開
　12週目：日本企業の東アジアビジネスと中国リスクの分散
第Ⅳ部（ビジョン編）：日本企業は経営の現地適応を通じて東アジアの平和と安定に資することができる。
　13週目：戦後日本の社会経済発展の経験と日本型資本主義の特徴
　14週目：東アジアビジネスと日本の環境・エネルギー技術
　15週目：経済文化交流を通じた東アジアの平和構築への道
テキスト: 下記の3冊を配布します。
１．石原享一著／肖燕･梁憬君訳『戦後日本経済的成敗啓示』世界図書出版公司（北京）、2019年。
２．石原享一著／梁憬君訳『世界任什麻和平共生』世界知識出版社（北京）、2015年。
３．石原享一著『戦後日本の経済と社会―平和共生のアジアへ』岩波ジュニア新書、2015年。
参考書・参考資料等: 授業中にそのつど紹介します。
成績評価の方法・基準: 平常授業における毎回のテキスト報告･意見発表･小レポートによって評価します。